木は、ときどき人を呼ぶ。
この栴檀もそうだった。
工場に運び込まれたときは、
土をまとい、荒々しい樹皮に覆われた一本の丸太。

けれど、その姿の奥に何かを隠している気配があった。
削るたびに現れる瘤。
流れるようにつながる年輪。
複雑にうねる杢目。
そしてオイルを塗った瞬間、
眠っていた景色が一気に目を覚ます。

赤く燃えるような木肌。
地図のようにも、
水脈のようにも見える不思議な模様。
それは何十年、何百年という時間を、
木が静かに抱き続けてきた証だった。
この一本から生まれたのは、
テーブル、ベンチ、ソファ、テレビボード。




けれど本当に形になったのは家具だけではない。
一本の木が生きてきた時間と、
誰にも見られることなく眠っていた景色。
怪木蒐集家。
それは珍しい木を集めることではなく、
木が長い年月をかけて育んだ「まだ見ぬ景色」と出会う記録である。
蒐集家記録
樹種:栴檀(せんだん)
状態:瘤あり・波状杢あり・年輪複雑・赤味強め
第一印象:燃えているようなのに静かだった。長い時間が木の中で熾火となり、今も赤く息づいている一枚。
発見日:2025年1月某日

