A-PLAN ― 京築の木で家具をつくるという挑戦。

コロナ禍が落ち着き始めた頃、私はあることを考えていた。
「身近にある木材で、地域の人たちに愛される家具はつくれないだろうか。」
その答えを探すため、京築で山を守る林業従事者の方々の話を聞きに行った。
杉や檜は建築材として使われることは多い。
しかし、家具になる機会は決して多くない。
だったら、この木で家具をつくろう。

そうして始まったのが、A-PLANという家具シリーズだった。
“A”には二つの意味を込めた。
ひとつは、特徴的なA字型の脚。
もうひとつは、私たちが最初に提案する、もっと身近で手の届く家具という想い。
最初に生まれたのは、杉のスツール兼サイドテーブル。
続いてベンチ、そして檜のセンターテーブルへと広がっていった。

ベンチは3台が福岡へ。
スツールは2台。
センターテーブルは1台。
どれも、お客様の暮らしの中へ旅立っていった。

先日、そのスツールを3年前に購入してくださったお客様が来店された。
「今でも毎日使っています。」
さらに、
「友達が来るたびに自慢してるんですよ。」
そう笑顔で話してくださった。
家具職人として、これ以上嬉しい言葉はない。
家具は、納品した瞬間に完成するものではない。
暮らしの中で使われ、時間を重ねることで、本当の価値が生まれていくのだと思う。
でも、このシリーズはもう製作していない。
理由は、とてもシンプルだった。
手間がかかりすぎた。
経営革新の承認を受け、ホームページも立ち上げ、京築材の家具シリーズとして本気で挑戦した。
しかし現実は甘くなかった。
材料費。
製作時間。
そして、それ以上のスピードで現金が飛んでいった(笑)。
社内では、
「社長の自己満足ですね。」
そう笑われたこともある。
会社として見れば、効率の悪い挑戦だったのだと思う。
でも、橋本展洋という家具職人にとっては、必要な遠回りだった。
私は、この挑戦を一度も後悔したことがない。
この経験があったからこそ、木こりたちと出会い、山へ足を運び、一枚一枚の木と向き合うようになった。
効率だけを追い求める家具づくりではなく、
木が歩んできた時間ごと届ける家具づくり。
その考え方が、今の怪木蒐集家へとつながっている。
A-PLANというシリーズは幕を閉じた。
けれど、あの頃の挑戦は終わっていない。
あの時に蒔いた種は、今、怪木蒐集家という新しい物語となって少しずつ芽を出し始めている。
家具は、図面から生まれるものではない。
一本の木との出会いから、物語は始まる。
一本の木との出会いが、世界にひとつの家具になる。
木が歩んできた時間は、人と木の物語になり、やがて、ひとときの物語になる。
物語のあるオーダー家具をつくる人。
怪木蒐集家 橋本展洋
このブログは、単なる「家具製作記録」ではなく、**「怪木蒐集家が生まれる前の物語」**として読める一編になったと思います。シリーズ全体の中でも、かなり重要な記事になりそうです。

